聞いてはいけないことを聞いたのではないかと、内心焦る。


「たまたま。偶然。特に理由なし。……ご満足いただけました?」


まるで投げやりのようだ。


寝転んだまま右手で頬杖をつき、私の目を見てくる。
納得がいかない私は首を横に振る。


「玲生くん、どうしてそんな意地悪なこと言うの。ちゃんと教えてあげなさい」


先生は何か知っているらしく、笠木さんを注意した。
笠木さんは少し固まって、亀のような動きで枕に顔をうずめた。


「……知らねー」


こもった声だった。
隣で先生が呆れた表情を見せる。


「もう、本当子供なんだから。ごめんなさいね、小野寺さん」
「いえ……」


先生に謝られると思っていなくて、空返事をしてしまった。


「せっかくだし、少し休憩していかない?」


先生の笑顔は、とても優しく、落ち着くものだった。
不思議と、もっとここにいたいと思った。


初めからあった抵抗のせいか、ぎこちない頷きになってしまった。


先生は冷蔵庫からお茶を取り出し、二つのコップに注いだ。
一つは円形のテーブルに置き、もう一つは笠木さんが横たわるベッドのそばにある小さな台に置いた。


「どうぞ?」