◇
笠木さんから一メートルほど距離を取って歩きながら、三限の始まりを告げるチャイムを聞く。
「転校初日で授業サボりか。俺が怒られそ」
笠木さんは笑いながら言った。
背中しか見えなくて、その笑顔を正面から見たいと思った。
誰かに対してそんなことを思ったことなどなかったから、自分が自分ではないような気がしてなんだか気持ちが悪い。
幸い誰の目に触れることもなく、今いる校舎の一階に降りた。
階段を降りてすぐ右手に保健室があり、笠木さんはそこのドアを開けた。
「いらっしゃい、玲生くん。最近はどう?」
「まあまあだな。いつも通り」
笠木さんが返事をしたということは、玲生は彼の下の名前なのだろう。
養護教諭の先生とそんな挨拶を交わしながら、中に入っていく。
体調が悪いわけではないのに保健室に入ることに抵抗があった私は、出入り口付近で動けないでいた。
「入れば?」
恐る恐る保健室に入ると、笠木さんはドアを閉めた。
保健室には長い髪をサイドでまとめ、白衣を身にまとった先生がいる。
「あら?あなたは転校生の」
「小野寺円香です」
名乗ると、先生は口に手を当てて、小さく笑った。
笠木さんから一メートルほど距離を取って歩きながら、三限の始まりを告げるチャイムを聞く。
「転校初日で授業サボりか。俺が怒られそ」
笠木さんは笑いながら言った。
背中しか見えなくて、その笑顔を正面から見たいと思った。
誰かに対してそんなことを思ったことなどなかったから、自分が自分ではないような気がしてなんだか気持ちが悪い。
幸い誰の目に触れることもなく、今いる校舎の一階に降りた。
階段を降りてすぐ右手に保健室があり、笠木さんはそこのドアを開けた。
「いらっしゃい、玲生くん。最近はどう?」
「まあまあだな。いつも通り」
笠木さんが返事をしたということは、玲生は彼の下の名前なのだろう。
養護教諭の先生とそんな挨拶を交わしながら、中に入っていく。
体調が悪いわけではないのに保健室に入ることに抵抗があった私は、出入り口付近で動けないでいた。
「入れば?」
恐る恐る保健室に入ると、笠木さんはドアを閉めた。
保健室には長い髪をサイドでまとめ、白衣を身にまとった先生がいる。
「あら?あなたは転校生の」
「小野寺円香です」
名乗ると、先生は口に手を当てて、小さく笑った。