生物室に行く途中、視界の端に金色の髪がちらついた。
まさかと思って右を向くが、目の前にはガラス、そして中庭を挟んで校舎があるだけで、笠木さんの姿はない。


見間違い、だったのか。


「小野寺さん?どうしたの?」


私が立ち止まったことに気付いた二人が、不思議そうに私を見ている。


「いえ……なんでもありません」


笠木さんを見かけたかもしれないと言えなかった私は、空いてしまった二人との距離を縮める。


生物室に着くまで何度も話しかけてもらっていたのに、さっきのことに気を取られ、曖昧な返ししか出来なかった。


その授業が終わると、お手洗いに行くと嘘をつき、笠木さんを見かけたと思った場所に行った。
授業中、気になってしかたなかったのだ。


そこには階段があるが、この校舎にはこれ以上階はない。
つまり、今目の前にある階段は屋上への階段ということになる。


妙な好奇心に駆られ、一段足を踏み出す。


「ここは立ち入り禁止だぜ?お嬢様。もしかしてまた迷子か?」


上から声が聞こえてきて、ゆっくりと見上げる。
そこにはやはり、笠木さんがいた。


「まーた固まった。なんだ?俺に惚れたか?」
「ち、違います!」


慌てて否定すると、笠木さんは声を殺して笑いだした。