桜は、とりあえずこの現状から抜け出したいと、美鈴の言葉を聞いて思う。

もし、選択を間違えて何かを失ったとしても、それは自分のせいだと。

そしてそれはきっと、ずっと前から、桜の意識しない時から定まっている運命なのだと。

桜はそう、心に言い聞かせて美鈴の言葉を心に仕舞う。

「ありがとう」

「ううん、本当はね、高倉くんが日本にいるなら私は絶対高倉くんを応援するんだけど、高倉くんの拠点が外国で高倉くん自身が桜のピアノのことを考えてるんだもん。私がそれを壊すようなことは言えないよ」

そこまで言うと、美鈴は一旦紅茶を飲んで声を整える。

「でも桜、1つだけ言うよ。あまり迷ってる時間は無いと思う。何が1番大切なのか、出来るだけ早く答えが出るといいね」

それは、桜にも分かっていた。

「うん」

「高倉くんだって、いつまでも1人とは限らないから」

と、ニヤリと笑って言う美鈴に桜はただ「あはは」と笑っている。

桜は自分の中で、期限を決めた。

そして誓う。

どういう未来になっても絶対に後悔しないことを。

「本当、ありがとう」

「いえいえ、いつでも相談してね」

「うん、ありがと」

桜と美鈴は、その後いつも通り話に花を咲かせて1日を終えたのだった。