「2人ともごめんね」

「いや、俺は大丈夫」

「俺も。でもなんだか見定められてるみたいで怖かったけどね」

「たしかに」


俺も航平も葵が好き。

でも葵はその気持ちに気づいていない。

それどころか葵は俺たちのことを幼なじみとしか思っていない。


なんだか難しいなと思う。

葵はまだ、お兄ちゃんのことが好きなんだろうか。


始業式のとき、桜をじっと見つめていた横顔が頭から離れない。


「すき」


その声は野菜や肉が焼ける音でかき消される。

この言葉がいつか葵に届く日がくるんだろうか。

なんだか涙がでてくる。