親戚に頼る事もできないまま、保護司が用意してくれた古いアパートで一人暮らしが待っていただけだった。
就職する事も出来ず、日雇いのアルバイトをして、ビルの掃除や食堂の厨房の仕事をしていたノエリ。
表に出られない・・・そう思っていたが、生活費も底をつき、どうしようかと思っていた時。
見つけたのが風俗の仕事だった。
夜の世界は訳アリの人ばかりで、素性を聞き出す人もいない、体を売るならたとえ殺人犯でも買ってもらえる・・・そう思ってノエリは風俗で働くことを決めた・・・。
「ノエリちゃん。羽弥斗はきっと、ずっとノエリちゃんを探していたんじゃないかと思うんだよね」
「・・・どうして? 」
「羽弥斗が警察官を辞めたのは、8年前。理由は話してくれなかったけど、ちょっとだけ僕には教えてくれたよ。「愛する人を傷つけたから、許せない」ってね」
愛する人・・・。
その言葉を聞くと、ノエリは胸が痛んだ。
風俗店で初めて羽弥斗と結ばれた夜。
羽弥斗は優しく「愛している」と言ってくれた。
でもノエリは、それはただの一夜の演出だと思っていた。
「ノエリちゃん。羽弥斗はね、僕に初めて頼んできたんだ。「助けたい人が居るから、一生かかっても必ず返すから。何も聞かないで10憶円、貸してほしい」ってね」
「10憶・・・」
10憶円。
それは、羽弥斗がノエリに渡したお金だ。