チラッと瑠貴亜を見るノエリ。


「羽弥斗は22歳の時に、養子に来てくれたんだ。それは、元々我が家にいた養女として来てくれた娘が嫁ぐことになったから。羽弥斗は、娘に恋していてたんだ。だけど、娘が愛した人は羽弥斗の実のお兄さんだったから。間違えても、争う事がないようにって羽弥斗は養子の道を選んだ。だけど、それだけじゃなかったんだ」


 瑠貴亜はノエリを見つめたまま、そっと微笑んだ。


「ひまわりは、特別養子縁組で我が家に来た子供だよ。そして、ひまわりの実の母親は・・・殺人犯なんだ」


 シレっとしていたノエリが、ゆっくりと瑠貴亜を見た。


「ひまわりの母親が殺した相手は、娘の実の母親と姉。今は服役中に病気になり、もう余命も残り少ないと言われている。警察の監視の下、病院に入っている。そんな犯人の子供を、羽弥斗は僕達に引き取って欲しいと頼んできたんだ。その理由は、ひまわりが殺人犯の子供だと後ろ指を指されて暮らさなくてもいいようにって、考えてくれたようだよ。でもね、羽弥斗はひまわりに実の母親は殺人犯である事をちゃんと話したんだ」


 はぁ? と、ノエリは目を開いた。

「その話をしたのは、ひまわりが中学生になった時だった。初めはショックを受けていたけど、羽弥斗はひまわりに言ったんだ。「殺人犯でも、命を懸けて産んでくれたお母さん。そのお母さんがいなかったら、ひまわりはこの世に存在しなかったんだ」ってね。その言葉だけじゃないだろうが、ひまわりはちゃんと受け入れてくれた。そして「お母さんが出所して来たら、迎えいに行ってお礼を言う」って言っているよ」

「殺人犯が母親なのに・・・許せるの? ・・・」


 シレっと言うノエリ。


「うまく言えないが、血の繋がりは理屈ではないかもしれない。ひまわりには、なんとなく、母親の気持ちが解るのかもしれない。母親を赦さなことは、自分を許さない事と同じだって、ひまわりは言っているから。それに羽弥斗は言っていたんだ「誰もが冷たい目で見る犯罪者でも、たった1人でも。更生してきた時に、優しく迎えてくれる人が居れば、きっと生きていて良かったって思えるはずだから」とね」


 ノエリはまた目を伏せた。


 ノエリが無罪で釈放されたとき。

 誰も迎えてくれなかった。

 信秀も江里菜も心不全で死亡していた。