「ご、ご家族とか……? って、こんなこと聞いちゃ、失礼かな」
「ううん。……木村くんの、お見舞いにきたの」

ズドーン、という音が頭やら心臓やらに響いたのは、気のせいじゃないかもしれない。
僕もタケチのお見舞いに来たわけだが、本来の目的を見失いそうだ。

さっきまでは、嬉しかった。
最近、顔を見かけるだけになってしまっていた宇都木さんと、少しでも話せたから。

だけど、その次に待っていたのは、試練だった。
まさか、宇都木さんがタケチのことを好きなわけはないと思うが、ともかく、わざわざ一人で足を運んで、タケチのお見舞いに来たのは、確かである。

「タケ……木村くんの!? 偶然だね、僕もなんだ」
「そうなの? じゃあ、一緒に行かない?」
「うん!」
モッチロンです。

普段の僕を知る人の前ではさすがにタケチ、と言えなかった。
宇都木さんはどこか安心した様子で、僕と並んでタケチのいる部屋まで行った。