宇都木小夜。
少し地味だが、美人で色白。
頭はよく、テストではいつも上位。
華奢な体格は僕に少し、似ているかもしれない。
そこがまた品を感じさせ、確かヴァイオリンを弾くのが趣味、という噂までもある、お嬢様。

自分で行定、と言ってみたものの、恥ずかしくなってきた。
何度も親に、僕は何でこんな名前なんだ、と抗議した。
平安時代のお貴族さまのような、よく言えばみやびやか、悪く言えば古めかしい、この名前を僕はあまり気に入っていない。

「今日は、どうしてこんな所に?」
嫌われているのか、向こうからは話しかけてくれる気配がないので、つとめて僕から話題をふる。

「……お見舞いに……きたの」

うっ、イヤな予感。
まさか、タケチの……。
いやっ、それはないだろう。天下の宇都木さんが、荒々しいタケチのお見舞いにくるはずはない。