「何、オマエいきなり力んでんだよ」
タケチがびっくりして、僕を見上げる。

自分でも、何でここでこんなに力んでしまったのだろう、と後悔。
だって……宇都木さんを、励ましたくて……。

恥ずかしげに座ろうとした時、横から
「ありがとう」
と、小さな小鳥のさえずるような声がした。

……やっぱり、よかった。

               *


田中さんから、歌をつくる基本を教えてもらい、面会時間も限界まで来たため、僕たちは帰宅することになった。
帰り際、タケチにあと何日で退院? と聞くと、もうすぐ、とだけ返って来た。

「今日は、ありがとな。俺、嬉しかった」
不器用に、顔を赤らめて言うタケチは、大男には見えない、近所の少年のようだった。