「聞いてりゃ、ただのお嬢様だけどな」
タケチの嫌味な横やりにも、宇都木さんは動じない。
ぽきんと折れてしまいそうなイメージだったけど、意外に芯の強いタイプなのかもしれない。

「違う。私は、確かに自信がないわけでもなかった。けど……何にも、なかったのね。でも、今は、ある。私、短歌をやってみたいの」

実に、筋の通った言い分だった。
彼女は、まだ続ける。

「ね、部活をやるには、部員は4人以上必要らしいの。桜井くんも入って? そうしたら、あと1人で成立するわ」

こっ、これは……断れん!
僕が入りさえすれば、リーチがかかるのなら……!!
宇都木さんを、助けるためだというのなら……!!!

「はいるよっ、僕も! が、頑張ろうよ! みんなでっ」
椅子からガタン、と大きな音を出して立ち上がり、僕はそう宣言した。