「でも、技法とか……詳しくないと、出来ないんじゃないかしら?」
冷静に、宇都木さんが言う。

そうだ。
中学までに習ったことをまとめるだけでも、係り結び、とか体言止め、とか本歌取り……とか掛詞、枕詞? とにかく、色々な技法で構成された短歌は、とても奥が深いに違いない。

「いぃや、根気だ」
田中さんが、窓を通り過ぎる風に、髪をなびかせながら言った。
てろん、となった薄い髪が、横に倒れこみ、バーコードヘアーになっている。
だけど、誰もそれを笑おうとはしない。

「こん、き……?」
真剣な顔つきで、宇都木さんは田中さんを見つめている。

「あぁ。いろぉんな歌を見て、いっぱいつくる。それを、なんどもなぁんども……続けていける、根気が全てじゃ」

確かに、と僕は納得した。