ベッドの上に並べられた、札の数々。
みな一つとして、同じ顔・文字はなく、しかも、そのどれも僕には意味が分からない。
……古典は、得意なんだけどな。

「このたびは~ ぬさもとりあえず たむけやま……」

何だ、このたび!? ぬさ!?
ひとまず分かったのは、この上の句に相当する下の句が、全く分からない、ということだ。

はてはて、下の句を待つしかなさそうだ……と悠長に構えていたら、
「ハイッ!!」

矢のような声とともに、僕の懐めがけて、タケチの腕が飛んできた。
次の瞬間、見事に僕の領域にあった一枚の札が、タケチによって奪われていたのだった。

「なっ、なっ……木村くん、下の句を聞かなくていいのかい? 間違えたら、お手つきになっちゃうんだよ?」
タケチはフン、と鼻を鳴らして、こう言った。
「知ってるさ、聞いてみな」