「ん……百人一首? ああ、田中のおっちゃんたちに勧められたわけだが、これが結構面白くてな。お前もどうだ、桜井?」

「はわっ! ハイハイ、やってみたいと存じますッ!」
まさか、一度言っただけで名前を覚えてもらえるとは、思ってなかった。
タケチ、僕すんごく嬉しいよ!


勢い余ってやる、といったものの、僕ははっきり言って、坊主めくりぐらいしかやったことはない。
僕は4回連続で坊主を引き当てる、という偉業を成し遂げたこともある。
姫を出した子のあとに、姫を引いてしまったり、なんていつものことだし。

まぁ、坊主めくりの話はいい。
とにかく、真剣にやったこともない百人一首をやる、と言ってしまったことを、僕はもう既に後悔しはじめていたのだった。

「じゃ、おいらは下がるよ! タケちゃん!」
はげ頭のおじちゃんが、僕にどうぞ、と場所を譲ってくれる。
おいら、なんて中々イケてる一人称をお使いになる方だ。