泪は魅月の名前に、紗來は泪の名前に。そして翔湊は、魅月と泪の名前に、少し驚いた様子だった。

晴雷は全員の名前を呼び終えると、そっと四人に近づく。




「 僕が、君らを拾わなかったら。 」




その声に、覇気はない。




「 君らは今頃、どんな人生を送っていたんだろう。 」




そんな言葉を聞くなり、紅苺は分かりやすく顔を歪めた。

立っていられるのもやっとな状態で、狂盛は何も言わずにただ晴雷を見つめている。
游鬼は言うことが聞かない足を動かし、ふらつきながらも、ゆっくりと晴雷の元へと向かう。だがそのまま歩けるはずもなく、ベッドに寄りかかるようにして座り込んでしまった。




「 もう、終わろう。 」




無理もない。

朦朧とする意識に、上手く出来ない呼吸。
猛烈な頭痛が更にその意識を霞ませ、少しずつ、四人の命を吸い取っていった。




「 もう、愛する人には苦しい思いをして欲しくないんだ。………だから…ゲホッ……これで最後。そうすれば、僕は、僕達は。 」




練炭の匂いが先程よりも充満して、晴雷は少しだけ咳き込んだ。

紗來は目に涙を溜めながら晴雷を見つめ、そんな紗來を見た翔湊は、込み上げる咳と頭痛に耐えながら、ゆっくりと口を開く。




「 …死ぬ、つもりですか。ここで、皆で。 」




乱れた呼吸でそう言うと、そんな翔湊を見つめながら晴雷は柔らかく笑った。


それは今までで一番弱く、儚い笑顔だった。
それはあまりに優しく、あまりに残酷なもので。




「 晴雷さん。もう、一人で抱え込むのはやめてください。そうやって、何もかも笑って隠すのはやめてください。僕の笑う顔より、ずっと下手です。 」




そんな笑顔を見た泪の言葉は、どこか暖かいものだった。