食べ終わって直前に健は、わたしをじっと見つめ始めた。
「ん? どうしたの?」
「砂糖菓子がついてる」
彼だってついているのに、自分のことは全然気づいていない。それくらい、わたしのことを気にかけてくれている。
「そういう健だって」
「今、拭いてやるから」
健は、自分のハンカチをポケットから取り出す。
「ちょっと待って」
あと数秒でわたしの唇と彼のハンカチが触れ合うところで、わたしは引き止めた。
「ん?」
「拭く前に、このままキスしたいの」
健は、ぷっと吹き出した。
「しょうがねぇな。今日は、お前の誕生日だ。いろんな想いを込めて、してやる。覚悟しろよ」
やっぱり彼は断らない。彼ってお砂糖がどれだけ含まれているんだろう。
ねえ、健。君は本当にお砂糖たっぷりだね。だって、わたしに甘すぎるから。
「ん……」
茶色い砂糖菓子のついた、彼のピンク色の唇が近づいてくる。ゆっくりと、わたしは目を閉じた。
彼の唇と、わたしの唇が触れた。
砂糖菓子なのか、健の想いが届いたのか、ケーキを食べている時とはまた違う甘さを感じられた。