「年上の女の人がみんなそうってことはないんじゃない? よく、わからないけど……」

「まあ確かに。たまたま俺の周りがそういうタイプばっかだったのかもな」


ロクちゃんはピザポテトをバリバリ食べながら、暢気に笑った。


「けど、相手のほうが経験値高いと楽ってのは本当だぜ? 現実な」

「そういうもの?」

「そっ。八代みたいな奴は年上とつき合えば上手くいくんじゃねえの?」

「どうなんだろうね」


いちごポッキーを食べながら、僕は彼女のことを想った。

聡美さんは、そういう雰囲気(?)をガッツリ出してくるとかではない。

でも、すごく警戒して予防線を張ってる感じでもない。

手をつなげば、嬉しそうにしてくれるし。

腕を組めば、安心して頼ってくれてる感じがする。


“自分の彼女にもストイックってどうなんだろう……”


彼女がそう呟いたときは、ちょっと驚いた。

唐突で、想定外だったから。

一方で、僕は彼女の言葉に安堵したのだ。

嬉しそうな笑顔も、頼られている感じも、僕の思いこみじゃないのだと。


「溝口さんてさ、諒と話してるとき、何気にすげー可愛いかったりすんだよな」

「ええっ、いきなりなんだよ!?」


それこそ想定外の発言に僕は思い切りうろたえた。


「俺、中学んとき、彼女にうっかり惚れそうになったことがある」

「はぁ!?」


ロクちゃんは「今だから言える話ってやつな」と豪快に笑った。


「なんだよそれっ。っていうか、うっかりって何だよ、うっかりって。僕、聞いてないよ?」

「言ってねえし?」

「僕、まったく気づかなかった……」

「そりゃあ、そうだろうよ」

「なんだよ?」

「おまえが“僕だけの溝口さん”って思って疑わなかったからだろ?」

「僕はそんなっ……」


どう、だろうか…………?


「違うか?」


ロクちゃんに正面から問われて考える。

いつも周りと一定の距離を置いていた彼女。

でも――。

僕とは気さくに話してくれた。

僕には心を許してくれた。

僕には素直に頼ってくれた。

僕には……僕、だけには――。


「……違わない」