ロクちゃんはピザポテトの袋を開けながら「八代には八代の事情があるんだろうよ」と言った。


「たぶんさ、単純に恥ずいってのもあるんじゃねーの? 女子とイチャイチャする自分が自分で恥ずいみたいな。もちろん、周りの目も気になるし」

「何それ、武士なの?」

「いや、武士ではないと思われ?」


僕が「むぅぅ」と納得いかない顔をすると、ロクちゃんはゲラゲラ笑った。


「あいつだって人並みに彼女といちゃいちゃしたいとは思ってるんだろうよ」

「そうなの?」

「だって、俺ら健全な男子高校生だぜ? 毎秒エロいこと考えててもおかしくないお年頃よ?」

「毎秒ってそんな……」


僕はとりあえず曖昧に笑った。


「けどよ、男がそんなだと、ひょっとしたら彼女のほうはしんどいかもな」


夏祭りのときに見た光景が、ぼんやりと思い起こされる。

僕と聡美さんはなんとも言えない気まずさを感じていたけれど。

当の八代はまったく気づいていないという……。


「“そういう雰囲気”をガッツリ出してくタイプのコならいいんだろうけどさ。たいていは彼女のほうがガンガンいくとかキツイんだろ? 俺はよく知らねえけど」

「そうだと思うよ。ロクちゃんはよく知らないかもしれないけど」


僕は思わず苦笑い。

実際のところ、ロクちゃんは、僕なんかよりずっと“いろんなこと”を知っている。


「年上のいいところは、ガッツリ雰囲気だして、グイグイきてくれるとこだからなぁ」


ロクちゃんが“関係をもつ”のは、基本的に年上の女性ばかりだ。

しかも、一人の誰かと長くつき合うという感じはなく、来る者拒まず、去る者追わずという調子。

本人に言わせると、タイミングには気を遣っているので二股をかけたことはないし、自分の知る限り浮気や不倫に加担(?)したこともないのだと。

僕からすると、かなり理解に苦しむところなのだけど。