「えー、今月から多忙を極めることになる。そこで残業が発生するにあたり、なるべく一人では帰らないように・・・」

朝9時。

全体朝礼が始まって。

お偉いさんの挨拶と注意点を聴くことになる。

フロアに響き渡る声。

気づけばこの会社に来てから3ヵ月が経とうとしていた。

ふぁぁ…とあくびを噛み殺して。

ぼんやりと管理者を眺めている。

けど、疲れているのか話が入ってこない。

気づけば「本日もよろしくお願いします!」という言葉で一同がバラバラと解散していく。


自分の机に戻って。

今日のスケジュールを確認していると。

教育係である香川さんが寄ってきた。

「勝又さんはおうち、何処?」

「へ? 何ですか急に」

仕事の話かと思いきや、世間話?

「残業は強制じゃないんだけどね。もし、残業するなら同じ方面の人と一緒に帰ったほうがいいわよ」

「へ? 何でですか」

と訊き返すと。香川さんは「は?」という表情で眉間にしわを寄せた。

「朝礼での話、聴いてなかったのかしら」

「へ!?」

どうやら、ここら周辺で変質者の情報が相次いでいるらしい。

それに加えて。最寄りの駅で殺人予告があったのだという。

(だから、駅周辺に警察官がうろうろしていたのかー)

香川さんの話を聴いて改めて納得する。

香川さんは「コイツ、ちゃんと人の話聴いてない馬鹿だな」という冷ややかな目で私を見下ろしている。

「で、どっち方面なの?」

「あ、私。地下鉄で、〇〇方面です」

「○○? じゃあ、福王子君と同じ方面じゃない」

…ホイ?