急に、そんなことを言われても。どうすればいいのか。

私が黙り込むと。

社長と部長も黙った。

「あの…、私じゃなくても。要(かなめ)さんがいるじゃないですか」

「要は駄目だ」

ピシャリと、部長が言った。

社長はふぅとため息をついた。

「残念だけどね、要さんは病気のことがあるから。これからは勤務時間を短くさせてもらったんだ」

「そうなんですか…」

社長の愛人(お気に入り)…という噂が流れていたのを思い出した。

実際は、嘘なのだろうかもしれないけど。社長は本気で残念そうな表情をした。

「他の社員からクレームがきていてね。要さん、仕事していないらしいね」

「それは…」

部長を見ると、まだ怖い表情をしている。

見ている人は見ているんだなと思ってしまった。

「残念だけどねえ。やる気がない人間をこれ以上ここに置いておくわけにはいかないんだよ」

また社長はため息をついた。

「彼女、家からここまで出勤するのに1時間以上かかっているっていうし。やっぱり身体が一番だからね。まあ…本人次第だけどね。どうしてもうちで働きたいっていうならば、雇用形態を変えて、家から近い東京本社か千葉支社で働いてもらうしかないね」

クビにならないんかいっ！　と、突っ込みたかったけど。

その言葉は飲み込んだ。

社長の精一杯の優しさなのだろう。

少し、嫌な気持ちになった。

「要は福王子を駄目にする。逆に勝又は福王子にやる気を与えていると俺は思う」

褒め言葉なのか、よくわからないが。

ムスッとした表情で部長が言った。

「おまえはあのバカ王子にとって、あげまんなんだよ」

「あげまん・・・」

まばたきを何度もしてしまう。ほぼ無意識に。

急に呼び出しておいて、一体。この人達は何をしたいのだろう。

「あのね、勝又さん。僕はね、福王子君は素直でとても良い男だと思ってる」

「はい…」

「福王子君はね、昔。前の会社で刺されたことがあってね。どうやら、それ以来。やる気を失っているようなんだよ」

「さされた？」

ササレタ？