とは言え、要さんが不在ということは。

王子と一緒に帰るチャンスが巡ってくる。

自然と王子と喋るチャンスがやってくるということだ。

「昨日はさ、鎌倉行って要ちゃんの病気が治るように祈願してきたよ」

王子は「はい、お土産」と言ってカバンから、鳩サブレーを一枚出して私に渡す。

月曜日。

頑張って定時に終えて、王子と帰ることになった。

王子から貰った鳩サブレーはちょうど鳩の首の部分にヒビが入って。割れている。

何かの衝撃で割れてしまったのだろう。

不吉な予感がしながらも「ありがとうございます」と言った。

「王子は、要さんのお見舞いに行ったんですか?」

「うん。香川さんと行ってきたよ。東京だからさ、わからなくて。香川さんにピッタリついて行ったよ」

自分から問いかけておいて。

だんだん、要さんの話にうんざりしてきた。

車内は混雑していて。

早く最寄り駅に着かないかと思ってしまう。

「要ちゃん、皆に心配かけてるのが申し訳ないから、早く復帰したいって言ってた」

「…へぇー」

どうでもいいわ。

冷めた感想しか出てこない。

要さんの話を聴くたびに自分が嫌な奴だなと思ってしまう。

ほんっとにどうでもいいって思ってしまうのだ。

まず、親しくないし。そんなに喋ったことないし。

そもそも、王子と仲良しだし。

嫉妬か、これぞ嫉妬というヤツか。

あー、モヤモヤが止まらない。