嫌だ。

嫌だ。

嫌だ。

本当に見たくないものを見てしまった。

何なの、アレは。

何で、王子の顔を見てニヤリと笑ったの?

「はぁー」

何度目のため息だろう。

要さんは医務室に運ばれた後、会社の車で部長が家まで送った。

要さんが倒れた現場を何人かの人が見ていて。

「あの子、倒れたの二度目らしいわよ」

「大丈夫なのかしら」

近くでオバサン集団が騒いでいた。

王子のお姫様抱っこを見てしまった私は。

その日、ショックであまり眠れなかった。

翌朝、要さんは来ていなかった。

朝礼後、部長に手招きされたので、部長の近くに駆け寄った。

「あのな、要が入院することになった」

「入院?」

「当分は来ないから、要の分までの仕事が勝又のところにくると思うけど、よろしく頼むよ」

「はい」

来ても来なくても、私は毎日2人分の仕事をこなしているのだが。

と、言いたかったけど。

やめておいた。

部長との話を終えて、王子をちらっと見た。

何となく、元気がない。

嫌な予感しかしなかったんだ。