相手と一緒にいたいと思うか、そうでないか。

昔、好きだった人が言っていた言葉だ。

「柚月は考えすぎる癖があるなぁー。この先も俺とずっとに一緒にいたい? いたくない? そう考えるだけじゃ駄目なのか」

そう言って、貴方は私を裏切った。

(嗚呼、アイツのことを何故今頃思い出す)

ぼんやりとしながら窓の外を眺める。

反射して酔っ払ったブッサイクな自分の顔が映る。

恋愛に臆病になっていただけ。

そうだよ。怖いんだ。

人生が終わってしまったと思うくらい。

あの時の絶望をまた繰り返すのが怖いだけだ。

だから、王子という存在さえも怖いんだ。

いつのまにか頭の中でいっぱいになってしまう。

彼の存在が怖いんだ。

「あれ、カッチャン?」

改札を出て。声をかけられて振り返ると。

まさかの王子が立っていたので、「げぇ!」という低い声が出てしまった。

自分の変な声には触れず、「今、帰り?」と言った。

王子は白いTシャツにダメージジーンズというシンプルだけど、とてもお洒落な格好をしていた。スタイルが良くなければ絶対に似合わない。

「もしかして、デート?」

「へ? 違いますよ。違いますって。友達がケバケバしているから、こっちはギラギラした格好じゃないと駄目なんです」

飲みすぎたせいか、何を言っているのか意味不明だったと思う。

でも、王子は頷いて「なるほどー」と言った。

天然って凄いな。

納得しちゃうんだ。

「王子こそ、お出かけですか?」

「うん。姉ちゃんとご飯食べて、その後友達とちょっと飲んできた」

ニッと笑う王子を見たら。

頭がクラクラしてきた。急に現れる? これは夢なの?

「噂のお姉さん。こっちに戻ってきているんですか?」

福王寺家の食事会の時に知った。

王子には5歳上のお姉さんがいて。

今は嫁いで福岡に住んでいるらしい。

「うん、今日帰ったけどね」