小学校の卒業文集に、将来の夢という項目があって。

私は、でかでかと「料理人」と書いた。

実家の店を継ぐのが夢になった。

兄貴は勝手に自由に生きていればいい。

弟は私を見て、「じゃあ、姉ちゃんを助ける仕事がしたいなー」と言っていた。

弟は、天使だ。

こんなことを言ったら、ブラコンと思われるかもしれないけど。

兄貴が悪魔だとしたら、弟は天使なのだ。

2人とも勉強は大嫌いで自由奔放だけど。

弟はちゃんと周りの空気を読んで、ちゃんと考えて生きている気がする。

高校卒業して農業の道を選んだのも。お店で使う野菜を作るためだったのかもしれない。

それに比べて兄貴は。

高校を中退して家出をした。

やっと見つかったかと思えば、またすぐに家出をして。

どれだけ家族を悲しませればいいんだとずっと思っていた。

そのうち、大好きな祖父が亡くなった。

そしたら、兄貴が戻ってきて、言ったんだ。

「俺がこの店を継ぐよ」

はぁ? と思った。

今更、お前。何だよと思ったね。

でも、一番腹がたったのは祖母だ。

あんなに自由勝手に生きてきた兄貴に向かって。祖母は、

「よく、言った。おまえが継ぎな」

だって・・・。

そして、私に言った。

「柚月、おまえは女の子なんだから。この店のことなんか気にせず堂々と嫁に行けばいい」

高校生の時に、祖母は亡くなった。

兄貴は、日本の洋食屋で修業したり、まさかのヨーロッパまで行って数年修業したりと。

本気で気持ちを切り替えて。

料理人への道を選んだ。

私は、兄貴のせいで。将来の道をヘチ折られた。