3人兄弟の私は唯一の女の子というわけか。

祖母にミッチリと厳しく躾をくらった。

「柚月は大和撫子を目指しなさい!」

というのが祖母の口癖で。

箸の持ち方から食事での振る舞い。礼儀、作法は勿論。

小さい頃は茶道、華道、ついには日本舞踊まで習わされ。

おしとやかに生きる道だけを見るように。

思えば、ほぼ洗脳じゃんかよ…と思うくらい厳しかった。

「いつかはお嫁に行くのだから、恥じない生き方をしなさい」

私の将来の夢はお嫁さんでしかなかった。

それとは真逆に兄貴は自由に生きていた。

ただ、周りからは期待されていた。この店の「3代目」となることを。

そのプレッシャーからか、何なのか。

兄貴は反発して、「こんな店誰が継ぐかよ!」と言い放った。

そして私に言った。

「柚月、お前がこの店の3代目になる運命なんだよ」

こうして、兄貴は中学生に入ったあたりから、グレやがった。

祖父母やうちの親は心底、兄貴を見て悲しんだ。

この店を継いでほしいという思いがいつのまにか、兄貴を傷つけて。

自由を奪っていたのではないか…。

そんな家族を見ていた私は。

自分が継げば、丸くおさまるのではないかって思った。

「おじいちゃん、おばあちゃん。私がこの店を継ぐよ」

小学校上学年になったあたりで。私は決心した。

私は料理人になるんだ。そして店を継ぐんだって。