朝、8時50分には自分の席に着いて。

9時に朝礼が始まる。

9時ちょっと前か、過ぎたあたりに。

こっそりと入ってくるのが、王子と(かなめ)さんである。

会社公認のカップル。

午前の仕事を終えると。あっという間に王子と要さんは姿を消す。

お昼時間に命をかけているのか、本当にあっという間に2人は出ていく。

そんな2人を微笑ましく、見ている会社の方々だけど。

やっぱり、見ているとイライラしている自分がいる。

もしかしなくても、僻んでいるだけなのかもしれない。

社長は、「うちの会社。年齢層高めだからさー」と言っていたけど。

同い年の要さん見ていると。

イラッイラが止まらなくなる。

わかっておりますよ。要さんはモデルばりの美人だし、王子という素敵な彼氏がいるし。

会社の皆に好かれていて。

ただの僻みだってことくらい。

(ただ、自分の仕事はちゃんとしてほしいわ)

彼女は、頑なに残業を拒否して。

定時で帰る。

仕事が中途半端な状態だと、その仕事を私が引き継ぐ。

定時で帰るのであれば、時間配分を決めて仕事にとりかかってほしいけど。

毎日が中途半端な状態で、片付けずに帰ってしまうのは流石に呆れた。

彼女は、王子と同様に仕事が出来ない。


「これは、姉ちゃんに対する嫌がらせなワケ?」

土曜日、届いた段ボールを開けると。

大量の野菜が入っていた。

すぐさま、電話をかけると。

「違うって。俺の野菜食べれば綺麗になれるんだよ」

と、調子の良いことを言う弟だ。

3つ下の弟は、勉強が嫌いすぎて。「農家になる!」と言って。

高校卒業をしてすぐさま、伯父が住む長野へと移り住んだ。

今は、伯父夫婦と一緒に農家をしている。

たまに、野菜を送ってくれるのはありがたいのだが。

量があまりにも多い。

「大丈夫! 姉ちゃん料理得意だろ! 最悪、大家さんにあげりゃーいいだろ」

「あのねぇ。そんなに親しくないんだって。大家さんと」

「じゃあ、会社の人! うん。じゃあヨロシク」

一方的に電話が切れた。