これぞ、本当に夢だなって思った。

それくらい、リアリティーがないのだ。

王子と居ると、非日常を味わえる感覚に陥る。

きっと、皆。好きになってしまうんだろうな。

あのカオとあの雰囲気に。

とはいえ、翌朝、(かなめ)さんと顔を見合わすのはつらかったけど。

意外とツンツンしていなかった。

(心が広いんだなー)

と感心してしまう。

ま、他の女性と2人きりが嫌だったら、本人も残業するよね。

気にしないことにする。

仕事は繁忙期のお陰で。

一日が早い。

まさか、自分が事務職で働くなんて思わなかったなー。

時計の針が20時になって。

帰り支度をする。

エントランスに出ると、今日は王子のほうが一足早かった。

「お疲れー」

「お疲れ様です」

王子の笑顔を見ると、癒される。

「カッチャン、仕事慣れた?」

「うーん…、まぁ慣れたんですかね」

たわいもない話をしながら、駅に向かって。

電車に乗って。

昨日、王子が降りた駅に近づく。

「じゃあ、お疲れ様です」

と頭を下げると。

王子はきょとんとした顔で。

「え、俺。降りないよ」

と言った。

ぷしゅー。

音を立てて、ドアが閉まる。

「昨日はね、友達のところに寄ったから」

「え、じゃあ最寄り駅どこなんですか?」

「△△」

「…ハイ?」

その駅は自分の最寄り駅だった。

…まさかの。