「今日も頑張ったねー。肩がゴリゴリだよー」

王子の独特な言いまわしに「はぁ…」と頷くことしかできない。

会社から駅まで10分ほどの道のりなのだが。

王子の隣に居ていいのかわからず数歩後ろを歩く。

緊張してうまく喋れない。

毎日、顔を合わせているはずなのに。

どうしても恥ずかしい。

イケメンに対して免疫がなさすぎる・・・。

王子がアレコレ喋ってくれているのに、自分からは喋れないのが、もどかしい。

改札を通り、ホームで電車を待つ間。

チラっと、王子は私を見た。

「勝又さんってさあ、俺のばあちゃんと同じ名前なんだよね」

「え、そうなんですか? ゆづ・・・」

「俺のばあちゃんもねー、カツ子っていうの」

…のんびりとした口調で言う王子。

だが、王子よ。

「あの、私。名前は柚月なんですけど」

渾身の王子のボケに素早く答えることが出来た。

王子は、私の名前が勝又カツ子だと、思っていたのか…。

ウケる…。

「だから、苗字が勝又でしょ。同じカツでしょ」

「え…。話の意味がよくわからないんですけど」

王子はたまに、よくわからない話題を振って周りを困らせている。

部長は「馬鹿王子」と言っているが。

女性陣は「天然で可愛い」と思っている。

遠目から、王子の不思議な会話を耳にしていたけど。

目の前で、よくわからない名前説を言われて。

困惑すら覚える。

「あ、そういえば。福王子さんの下の名前って真一郎ですよね。私のおじいちゃんも、真一郎っていうんですよ」

「お、じゃあお互い同じだねー」

「…同じではないです」