次の日、私は少し気分が良かった。


私の今の現状を知れ、

それを少しだけだが改善出来た。


何より、

今日からは奈良さんの笑顔を研究してやる、

と少しやる気になっていた。


そうだ、

笑顔を作るとは、

喜びを見つける為の余裕作りと言っていたな。


周りを少し見てみようか。

そう思うと耳が音を拾った。



「ねぇみてけんちゃん!

ここにお花あるよ!」


「お、まじじゃん!

コンクリートからなんで生えてんだ?!」


「不思議だねー!

でも綺麗だねー!」


「おう!そうだな!

あ、青になる!並ぼうぜ!

ほら手!転ぶと危ないからな!」


「ありがとうけんちゃん!」



2人の子ども達は手を繋ぎ、

青になったら渡っていた。


花…。


子ども達が居た所を見ると、

スーツを着たおじいさんが花を抜こうとしていた。



「あ、あの…!」


「ん?なんだい?」


おじいさんは驚いたような顔でこちらを見た。


「その、花…」


普段仕事以外で人と話をしない私には、

伝える事さえ出来ない…。


どうしよう、このままでは花が…。



「…あぁ、この花かい。

私が育てようと思ってね。

ここに咲いていたら、危ないだろう?」



っ、

このおじいさん、優しい人だったのか。

良かった…。



「ありがとう、ございます。」



私は自然と感謝を口に出していた。

言葉にするのは、気恥しいな。


おじいさんは少し驚いた顔をしたが、

後にニコッと笑い。



「大切にするよ。

ありがとう。」



おじいさんは花を傷付けないように持ち、

私に向かいお辞儀をし去って行った。




“ありがとう”




その言葉を言われたのはいつぶりだろう。


気恥しいが、

誇らしくもあり、

嬉しく、


胸がいっぱいになった。



奈良さんには、あの番組には感謝しないとな。



喜ばしい出会いをさせてくれて、

心踊る体験をさせてくれて、

ありがとう、



と。