ニ、ニコォ…。
「下手だな…。」
口角は作り笑いとすぐ分かる程ぎこちなく震え、
頬もほとんど上がっていない。
私は笑顔も作れなくなっていたのか…。
でもあの子は…
司会のあの子は笑うのが上手だったな。
今の私には眩しいくらいに。
…もう少し頬を解してから笑ってみようか。
グリグリグリ…………。
よし、これくらいか。
ニコォ…
お、さっきよりは笑う事に対して抵抗感はないな。
うん。
今日はこの位にして寝よう。
明日もあれがあるらしいし、
残業は避けたい。
…私はあの子の笑顔を見てから、
あの子の必死さに、
巻き込まれていたんだな。
奈良さんだったか…。
仕方ない。
彼女より年上のおじさんが、
笑顔なんかで負けていられるか。