「月が綺麗ですね。」

私は空を見上げる。

「ええ…そう…ね?」

私が戸惑いながら言うと、史田くんは少し迷ったように呟いた。

「…夏目漱石…」

夏目漱石?
…これって、もしかして…?

「…あなたと見る月だから。」

私が思い出した返事を言うと、史田くんはパッと笑顔になって私に尋ねてくる。

「本当か?!」
「えっ…う、うん…?」
「やったー!」
「ちょっと、声響くって…」

「じゃあ、俺と付き合ってくれますか?」
「は、はい…」

私の返事が、月の煌めきに照らされた。