私は本を借りて図書館を出る。
外は黒い絵の具を溶かしたような闇に、月白色に満月が輝いていた。

「じゃあ、また…」

私はいつものように歩き出そうとする。

「本谷って、家どの辺?」
「私?私は2丁目5番地だけど…」
「じゃあ一緒に帰るか!」
「ええ?!」

私たちは黙って並んで歩き出す。
何か話題がないか、必死に考えるけど、考えれば考えるほど出てこない。

私の家まであと50mほどになったところで、私は立ち止まる。

「もうすぐ着くし、ありがとう。」
「そっか。」

私が歩き出そうとすると、史田くんが言った。