彼の名前は史田 光。

普段は教室の中心で笑っているような、所謂カースト上位の男子だ。
対して私、本谷 月乃は学校でも本ばっかり読んでいるような地味な女子。

学校でも、授業中以外に会話したことは、入学して半年経った今もない。

「本谷さんっていつも本読んでるよね?」
「は、はい。史田くんは本、読むんですか?」
「何で敬語(笑) 読むよ、本。好きなのは…有川浩とか?あのドキドキするスピード感、ちょっとキモいかもだけどキュンとする恋愛!」

キラキラと目を輝かせて話す史田くんを見ていると、自然と笑顔になる。

「キモくないですよ(笑)あ、いいですよね、有川浩。それなら東川篤哉とかも面白いかも。」
「読んだことないな。サンキュー、読んでみる!本谷さんはどんなの読む?」
「私は…色々読むんですけど、1番好きなのは七月隆文です。意外かもしれないけど、恋愛モノとか好きなんですよね。」
「たしかにちょっと意外かも。あ、時間!ごめん、またな。」
「ええ、また。」

ポンポンとリズムよく弾む会話。
それに、本が好きなことが伝わってくる輝く瞳。

私は本棚に視線を移しても、心臓がドキドキしていた。