こうして一度も会えないまま時は過ぎ、何度目かの春を迎えて、私は高校1年生になった。
「行ってきまーす」
「気をつけてね〜」
真緒とのいつもの待ち合わせ場所へ向かう途中、私は母の朝の様子を思い出していた。
というのも、今日の母はいつも以上にご機嫌だったから。
朝から鼻歌を歌い、ニコニコと笑みを絶やさない。
どうかしたのかと聞いても、「うふふー」という不気味な声しか返ってこない。
母が変なのはいつものことだから、別に心配とかはしてないけど。
単純に今日が入学式だからかな?
「陽毬〜、遅いよー」
「あ!真緒ごめんね、おはようっ」
先に待ち合わせ場所に着いていた真緒と合流して、学校に向かった。
私達が今日から通うのは、地元の公立高校。
母がここにしなさいっていうから、別に行きたい高校もなかったし「じゃあそこでいいかー」って。
真緒は私と同じならどこでもよかったみたい。
校則が厳しくなくて制服が可愛いことで人気の高校だったから、不満はないしね。
「相変わらずふわふわしてんね、陽毬の髪って」
「んー…生まれつき癖っ毛だから仕方ないんだよ〜…」