希くんに言われた通りに深呼吸すると、体内一杯に、さっきも感じたあの匂いが入ってくる。




これは―――――森林の匂い――――?




希くんの、匂い―――。





「―――はぁ……」





希くんの匂いのお陰か、だんだんと落ち着いてくる。




「―――大丈夫か?」




低くて優しい、希くんの声。




すごい、落ち着く――――。





「―――うん、もう落ち着いた。ありがとう」





お礼を言うと、希くんは私から離れる。




「ねぇ、希くんの香水、すごい落ち着くんだけどどこの香水――――」





言いかけて、止まってしまった。





――――だって、目の前の希くんの顔は驚くほど真っ赤で。