商店街を出て、展望台がある方向へと進む。
人気が少ないのと、その展望台から町を見渡せるため…そこから梨乃くんを見つけようと。
「梨乃くん!!」
どこ、どこにいる?
展望台に上がって、町を見渡すも…外灯が少ないため暗がりの中で見つけ出すのは困難だった。
もう…、この町にはいない?
私を一目みたから、約束は果たしたってことなの…?
「……っ、梨乃くん!!」
浜辺に行き、そう叫ぶ。
私になんか、会いたくないってことだよね。
約束は、してくれたけど……。
自分の右手小指を見つめる。
指切りしたのにな……。
足元にいる小さな虫に「わっ…」という声をあげてしまった。
幼い頃からの虫嫌いは全然治っていない。
私は虫から離れて、そろそろ…と横に歩く。
ドンッ
「あ…、すみませ…」
人にぶつかってしまい、謝ろうとその人物を見たときだった。
「…え?」
いきなり目元を隠され、周りがなにも見えなくなってしまう。
これって確か……。
梨乃くんや、由紀さんがしていた…。
「…ちょっと恥ずかしい。大声で名前を叫ばれると」
懐かしい声が聞こえて、視界が開ける。
目の前にいたのは、ずっと探していた梨乃くんだった。
「久しぶり、真莉」
「梨乃く……っ…」
「…泣かないで。大丈夫だよ」
前のようにそう声をかけてくれた彼に、胸が締め付けられた。
「約束、覚えてくれてありがとう」
「ううん……、ごめんなさい…私、大切なことをずっと忘れてた…」
「それは仕方ないことなんだよ。あのウイルスに感染した双子の運命だから」
「そうなの…?」
「あ、ほら…これ。」
梨乃くんが手渡してくれた私のスマホ。
「な、中身とか…」
「ふふっ、見てないよ」
「ありがとう…、無くて困ってた」
「どういたしまして。あ、上を見てごらん」
「上……?」
顔をあげて、上を見上げると……綺麗なペリドット色の夜空が広がっていた。
「綺麗……」
『ペリドット色の夜空を見た男女は、両思いになれるんだとよ』
ちょ……、那奈ちゃんの言葉を思い出して恥ずかしくなってきちゃった。
「僕達、両思いになれるかもね?」
「えぇっ!?」
「ぷっ…」
梨乃くんにからかわれて、顔が赤面する。
だけど、自然に二人とも向かい合った。
「探してくれてありがとう。でも…、もうその必要はないよ」
「え…?それって…」
「うん、ずっとここにいる」
「…っ……ぅ…」
涙を流した私の頭を、優しく撫でてくれた梨乃くん。
辛かった日々、解剖されるのはいつかと身構えていたけど……。
それも、全部なくなった。
二つのペリドット色の瞳から流れる涙は、きっとまた新たな光を生みます。
必ず、いつか奇跡が起こります。
ペリドット色の夜空の下で、私達は今…それを実感しているから。
*end*