家に到着して、自分の部屋に入る。
鞄を下ろすと、息をついてベッドに座った。
ペリドット色の夜空かあ…。
確か那奈は…緑に近い色…って言ってたよね。
私は朝より夜に弱いから、夜中まで起きていられるかな…。
鞄から今日出された課題を取り出すと、私服に着替えて机に向かった。
勉強は苦手だけど……那奈から教えてもらったことを思い出して…と。
よし、頑張る!!
しばらくして、課題も終わり…ノートを鞄に入れようとした時だった。
ふと視界に入ったペンダント。
ノートをベッドに置いて、ペンダントを手に取った。
カチッと開くと、私と実莉と…お父さんとお母さんが写っている写真が貼られている。
懐かしいなあ…。
何気にみるのは久しぶりかもしれない。
入学式の日に撮った写真だ。
幼いなあ…私も実莉も。
小さく微笑んで、ペンダントを閉じる。
これって確か…もらってからずっと開けてなかったんだよね。
そう……。
「もらって…、から……?」
もらった…?誰に?
ペンダントは確か私が中学2年生の時に、もらったものだ。
首にかけてもらって……。
私は泣き笑いで……。
「え…?どういうこと……」
なにかの記憶のようなものが、映像として脳内に流れ込んでくる。
『…泣かないで。大丈夫だよ、不安がらなくても』
『また会おう。約束するから』
『行きな。皆のところに』
一体誰…?
指切りで約束をし、私と男の子の手がゆっくりと離れていく。
その後、私はペンダントを見て泣き叫んだ。
「あっ……あ……っ」
涙がぽろぽろとこぼれだして、口元を押さえた。
思い出した……。
どうして、こんなに大事なことを忘れていたの…?
助けてくれたのはあの人なのに…。
ペンダントをくれたのはあの人だった…。
「梨乃くん…っ」
その名を口にして、また涙が溢れた。
そうだった、全部思い出した。
私はお母さんに裏切られ、実莉と一緒に研究施設へと連れていかれた。
そこで出会ったのは、海斗くん…彼方くん…那奈ちゃんと音子ちゃんだ。
幼なじみなんかじゃない、私達は幼い頃から一緒なんかじゃない。
その研究施設で出会った、同じ双子の子達だったんだ…。
そして、梨乃くんも。
私を助けてくれて……、幼い頃にうさぎのぬいぐるみの腕も直してくれた。
そして、教室で眠っていたあの2年生の男子生徒。
「あれが…、梨乃くんだっ」
高校2年生の梨乃くんを見ても思い出せなかった。
どうして、忘れていたんだろう……。
梨乃くんに会いにいかなくちゃ。
話をしなくちゃ……。
また、忘れてしまった……。