その後、手芸部の部室や実莉のクラスの教室を覗いたけど…実莉はいなかった。
メールの返信も来てないし…、かれこれ30分以上は探してる。
『実莉!どこにいるの!海斗が心配してたよ?』
そうメールを送るも、既読すらつかない。
スマホをスカートのポケットにしまうと、誰もいない2年生の棟を探し出す。
山北先輩と一緒にいるなら2年生の棟にいてもおかしくないと思うんだけどなぁ…。
だけど、そこにも実莉はおらず…。
廊下に私の上履きの音だけが寂しく響き、半ば諦めようかと思っていたその時。
バサッ、バサッとカーテンが風で揺れているような音が私の耳に届いた。
どこか、教室の窓が開いているのかな…?
だったら、閉めておかないと先生に怒られちゃうよね。
歩みを進め、近くの教室を覗いて…思わず言葉を失った。
教室の奥、強い風でカーテンがかなり揺れている。
だけど、問題はそこじゃない。
カーテンの下に、三つほど机が寄せあっていて。
その上で、男子生徒が目を閉じて眠っていた。
恐る恐る近づき、顔を覗き込む。
見たことのない顔……。
ネクタイが緑色だから、2年生だ。
先輩が…こんなところで寝てる。
名札はついていないし、名前はわからないけど。
「…綺麗」
はっとして、思わず心の声が口に出ていた。
ん…?
こんなこと、前にもあったような…?
気のせい、かな。
目の前で寝てる先輩の寝顔は、すごく綺麗だった。
すぅ…すぅ……と正しい寝息をたてている。
起こさないほうが…いいよね?
っていうか、もう少しで最終下校時間過ぎちゃうけど…。
窓を閉めるのは…やめておこうかな。風で髪の毛が靡いてるし、気持ち良さそうだし。
ブーブー。
「っ!?」
「ん…」
メールの受信音がポケットの中のスマホから鳴って、慌てて取り出す。
実莉からだ!
『山北先輩と一緒にパフェ食べに行ってた!ごめん!今はもう家に着いたよー!心配かけてごめんって、海斗にも伝えておいて(;>_<;)』
もう…、心配かけさせて……。
でも、家に帰ったのなら良かった。
部活も今更行けないし…帰ったらメールで先輩に謝って…。
「…誰?」
「へ?」
目の前には眠そうに開いた青がかっている瞳。
ハーフなのかな…?綺麗…。
じゃなくて!!!
「あ、その…え、えっと……」
「…ん」
パニックになった私は、手からスルッとスマホを落としてしまう。
だけど、それに気がつかなかった私はバッ!と頭を下げた。
「ごめんなさいっ!!」
そう謝って、教室を飛び出した後…一目散に家へ帰った。
スマホを落としたことを思い出し、頭を抱えて落ち込んだのは言うまでもない。