放課後、部活へ行くために鞄を肩にかけると教室を出た。
「あ、実莉!」
「ん…?」
廊下から走ってきたのはもうひとりの幼なじみ、桧山海斗。
実莉の恋人で、私もよく仲良くしてるんだけど…。
私を実莉と間違えてる?
「ちょっと待ったー!」
「えっ!?」
手を前に出してそう叫ぶと、海斗は足にブレーキを踏んだ。
「私は実莉じゃない!真莉だよ」
「あ、まじか!ごめん!また間違えたっ」
パチンッと手を合わせて謝る海斗に、首を横に振る。
「大丈夫だよ、一卵性だし幼なじみでも遠くからだと、見分けつかないでしょ?」
「なんか最近、視力落ちてきたんだよな…」
「どうせ、夜中に暗い部屋でスマホいじってるんじゃないの?」
「な、なんでそれを!!」
「ほらね!ふふっ…適当に言ったのに」
「うっ……て、ていうか!実莉見なかったか?」
「実莉?見てないよ。なにかあったの?」
「一緒に帰ろうって約束してたんだけど、山北…先輩?って人と一緒にどこかに行ってるのを見かけたから、追いかけようとしたら見失ったんだよな」
「そうなんだ…。実莉にメール送ってみるから、返事が来たら連絡するね。一応、私も探してみる」
「おう、ありがと!」
海斗に手を振って別れると、部活の先輩にメールをする。
『すみません、色々事情があって部活に行くのが遅れそうです』
すると、すぐに返信がきた。
『それなら大丈夫だよ!今、来てる人少ないし、特になにもやる予定ないからね!』
あ、そ…そうなんだ。
私は美術部に入っていて、数少ない部員の皆と仲良くしている。
部活の先輩も、気軽に話しかけてくれるし今の部活がとても楽しい。
だけど…数少ないのなら尚更行ったほうが良かったかも…先輩、絶対に暇だよね。
メール画面をもう一度開き、実莉にメールした後…廊下を走った。