「ねーねー!早く行こうよ!」




実莉が長い髪の毛を揺らしながら、キャッキャッとはしゃいでいる。



「はいはい、先に行くのはいいけど人にはぶつからないようにね」




「はぁーい!」






休日ということもあって、人が溢れ返っていた。




私と実莉の誕生日当日。



お母さんは有休を取って、水族館に連れてきてくれた。



お父さんは、私が幼い頃に病気で亡くなってしまったから女手ひとつで育ててくれた。




「お母さん、仕事忙しいのに連れてきてくれてありがとうね」




「いいのよ、今日はたまたま有休が取れたから。実莉も楽しそうだし」




うふふっとにこにこ笑うお母さんを見て、私は少し安心する。




この水族館に来るのは小学生以来で、久しぶりの水族館にドキドキしていた。



大きな水槽に入っているお魚さんを見て、実莉が目をキラキラさせている。




歩みを進めていき、別のエリアに入った。




「わぁー…」




天井に水槽があって、魚が泳いでる。



綺麗で、思わず声が出た。




「真莉ちゃんは行きたいところとかないの?」



実莉がしてきた質問に、少し考え込む。



行きたいと思う場所はないんだよなぁ…。


せめて言うならお土産屋さんとか?



でも、それはきっと最後に行くだろうし…。



「私は特にないからいいよ。実莉の好きな場所に連れていって?」



「わかった!じゃあ、イルカショー見に行きたい!」



「はーい」



イルカショーは確か、入り口からかなり離れて行っていたような…?



昔の記憶だから正しいかはわからないし、もう場所が移動されちゃってるかもしれないけど…。



私はスマホを取り出すと、天井にある水槽の魚を写真で撮った。



本当に綺麗だなぁ…。



昔の私が見たら、なにこれ?ってなりそうだけど…。



そう思いながらも、別のエリアに入っていった実莉を追いかけた。