他の部屋よりもはるかに暗い地下。
私達は長い階段を恐る恐る降りていく。
静けさがあって、多少の足音も大きく聞こえてしまう。
「…福井くん」
不安になって、呟くと…隣にいた実莉に聞こえてしまっていたようで。
「福井さんを救出したら、皆で一緒に出ようね?約束」
小指を差し出され、私は頷いた後に自分の小指を絡めた。
実莉は、私がなにか悩んでいるときや落ち込んでいるとき…不安を感じているときにいつも気がついてくれる。
そのたびに、何か声をかけて安心させてくれるんだ。
「…福井くんって人、見たことがないから…一度会ってみたいな。」
背後から声がして振り返ると、遥さんの声だと気がついた。
「はい!とっても素敵な人です」
ぽろっと本心が溢れ、遥さんか目をぱちぱちと二回瞬きさせた。
そのあと、すぐに笑顔になる。
「うふふ、真莉ちゃんにとって福井くんってどんな存在?」
「え?どんな…存在……」
そんなこと、考えたこともなかった。
でも、今なら分かるかもしれない。
3ヶ月もずっと離れていて…、ずっと不安に押し潰されそうになっていたから。
福井くんは、私にとって………。
「福井くんは、私にとって安心できる人です。隣にいるだけで……自然と不安が消えていくような…」
「好きなんだね」
「えっ!?」
「わっかりやす」
彼方くんが意地悪そうに微笑み、私は少しだけ彼方くんを睨んだ。
「彼方くんは恋したことあるの?」
実莉の質問に、彼方くんは考える素振りも見せずに即答した。
「あるよ。……しばらく離れてて、話すことができなかったけど」
「へえ…」
「なんだか悲しいね……」
「でも、もう寂しい思いはしないよ」
さっきまでの笑顔とは裏腹に、見たこともないような優しい笑みを浮かべた彼方くん。
一卵性……、海斗くんにそっくり。
「ついたぞ、ここだ」
話に夢中になっていると、いつの間にかドアの目の前まで来ていたようだ。
鉄製の扉に、古そうな照明がカチカチという音を立てて消えかけている。
「開けるぞ。皆、身構えろ」
那奈ちゃんの言葉に少しだけ、足を下げた。