「助けて!!誰かぁ!!うぎゃっ!!」



「個人部屋にいる双子がほぼ脱走しているぞ!!直ちに出入口の鍵を確認しろ!」



部屋を出て、廊下に出るとその声が聞こえた。



「真莉ちゃん、生きて出るんだよ。だから早めに行動しなくちゃ」


小声で実莉の声が私の耳に届き、さっきの声のする方から目を逸らすと、治療室のある方へと向かった。





「二人とも!こっち!」




音子ちゃんだ。



治療室の前で手を振って、私達を手まねいた。



部屋に入ると、傷だらけの女の子が床に横たわっていた。



所々に見ただけで痛そうな傷があり、近くには血がついた服がある。




意識はあるのか、わからない。




目を閉じて、微かに息をしている。





「那奈と彼方くんが今、操作室に行って特別センサーをoffにしてきてくれてる。けど…、正直どうなるかわからない……。」




「死んじゃったりしないよね……?」



私が不安になって聞くと、音子ちゃんはぎこちない笑顔を向けて、「大丈夫だよ!二人とも強いからっ」と声を明るくして答えた。



ドドドンッ!!



「うっ…!」



「大丈夫だよ、静かに」



拳銃のような音が……って、拳銃!?




「音子ちゃん…今のって…」



「…うん。多分、拳銃の音だと思う。それもなかなかのサイズのね。…逃げ惑う双子を殺そうとしているのかも…」



「そんな……」



一気に不安が駆け巡り、涙が出そうになる。



だけど、隣にいる実莉を見ると…無表情でドアの向こうを見つめていた。



まるで……、拳銃の音になにも興味がないような…。



「二人とも、お願いがあるの」



「な、なに…?」



音子ちゃんが私と実莉の肩を持ち、真剣な表情をした。



「この施設には地下があるの。研究室の床に、隠し扉があって、その先には階段がある。



階段を降りたら目の前に扉があるから、その部屋の中にいる福井くんを助けて出して。」



「福井くん…!?福井くんはそこにいるのっ!?」


「ごめんね、時間が無いから詳しく説明は出来ないんだけど……、とっても危険な状況だから。



治療室を出て、右手にある第2研究室の隣の廊下を渡って。



真っ直ぐ進んで、そのあと左の角を曲がってね、絶対に走るのを止めちゃだめだよ。私はずっとここにいるから、なにかあったら伝えて」




「わかった……」




「音子ちゃん、大丈夫だよ。私と真莉ちゃんは絶対に福井さんを助けるから!!」



実莉が自分の胸に手を当てて、そう言った。



音子ちゃんは柔らかく笑うと、「よろしくね」と呟いた。



「よーし、真莉ちゃん行こう!外に出たら真っ先に走ってね!」


「あ、うん……。ねえ、音子ちゃん…その子、大丈夫なの?」



横たわったままの女の子を見つめながらそう言うと、音子ちゃんは女の子の頬に触れながら、寂しそうに笑った。



「もう……息は無いよ。施設の人に拳銃を向けられて、動けなかった私を庇ってくれたの。



ありがとう……ごめ…んね……」








ポロポロと流れた音子ちゃんの涙を、何も言わずに見つめることしか出来なかった。