それから翌日、あまり眠れなくて寝不足になっていた。


それは実莉も同じなようで、特に決まりもないためお昼は寝て過ごした。


目が覚めた時には、夕方の6時でなにも入っていない胃が空腹を訴え始めた。



「真莉ちゃん、海斗くんと話さない?夜ご飯持ってくるから…その時に誘ってみる」


「うん…ごめんね、ありがとう」



実莉が個人部屋から出ていくと、一人になった部屋で少し不安になる。



いつもは音子ちゃんがここに来てくれて、実莉が食堂から戻ってくるまで会話してるから…。



一人になると、今まで自覚がなかった不安とか悩みが見つかるんだなー……。



福井くん……、死んでなんかいないよね?




きっと、また会えるよね…?




会いたいよ……。




目が涙で滲み、服の袖で拭う。



どうしてここまで、福井くんのことで不安になっているのかわからない。




だけど、福井くんは私を助けてくれた。




それからだと思う…、福井くんが私にとって大切な存在になったのは。




それと、福井くんの双子のお姉さん『由紀』さん。



多分、見かけたことがないと思うけど…。




由紀……?




由紀、という名前になぜか引っ掛かる。




どこかで、聞いた?いや……。





見たんだ、どこかで…その名前を。






どこで見たんだろう……、名札プレートのようなもので書かれた『由紀』という文字は鮮明に思い出すことが出来る。




だけど、それをどこで見たか。




うーん……。




コンコンッ




頭を悩ませていると、ドアがノックされた。


「はーい」



返事をすると、ドアが開いて那奈ちゃんが顔を出した。



後ろに音子ちゃんもいる。



「お邪魔します。昨日は大丈夫だったか?…よく眠れなかっただろ」



那奈ちゃんが悲しげに笑うと、そう言った。



「ちょっと寝不足にはなっちゃったけど、平気だよ。今日のお昼は寝て過ごしたから」


「そっか、なら良かった」




那奈ちゃんが近くの椅子を引き、そこに座った。



後ろにいた音子ちゃんは、ベッドの上にいる私に近づいてきた。



「真莉ちゃん、昨日はごめんね。心配してくれてありがとうっ、もう大丈夫!」



私ににこっと笑顔を向けて、音子ちゃんはそう言った。



けど、少しだけ声が震えている。



「…音子ちゃん、無理だけはしないでね?心配だから…」



「え…」




「ほらな、音子。さっき言っただろ?真莉は絶対に気づくって」



「す、すごいね……私のことを見破るなんて…」



二人の言葉に、頭の上にはてなマークが浮かぶ。



音子ちゃんは寂しそうに微笑むと、「ごめんね、無理だけは絶対しないって約束するから」って呟いた。



一体、音子ちゃんになにがあったのかはわからない。


けど、私が今聞ける状況じゃない気がする。


深く聞く必要も、無いかな……。