「……っ」






目の前にいるのは、手錠をかけられて地面に座り込んでいる大人数十人。






その中に、お母さんと柚希のお父さんがいた。





「真莉っ!!助けて!!」






お母さんが涙を流して、ぐしゃぐしゃになりながら叫んだ。







服はボロボロ、髪の毛もひどく乱れている。






おまけに、細くて綺麗だった足も、所々傷や痣だらけだった。






「昨日はごめんなさい…、お母さんどうかしていたわ。でも、ちゃんとわかったの。お母さんには真莉と実莉しかいないって。ねっ?お願い…お母さんを助けてちょうだいっ」







「福井くん…、どうしてここにお母さんがいるの?」






私が隣にいる福井くんにそう尋ねると、少しして口を開いた。



「……大金を渡すとの偽りを信じ、死に物狂いで双子を探しだして、ここの研究員に双子を売った大人が全員ここに集められている。君の母親もそのひとりだ」







「そう…なんだ」






「真莉?あなたをここまで育ててあげたのは誰?お母さんでしょっ?早くこの手錠を外してちょうだい!」







「お母さん、待ってて…今私が、」






実莉の手を掴むと、お母さんに駆け寄ろうとしている実莉を止めた。








「長田実莉ちゃん、母親にされたことを許せる?」






「どういうことですか……?」








「実莉……、お母さんはね…大金を手に入れるために私達を研究員に売ったんだよ」







「え…、な、なにいってるの真莉ちゃん?お母さんがそんなことするはずないよ。優しくて、私達のこと大好きって言ってくれてたじゃん」







実莉は信じられないのか、小さく笑って誤魔化した。







「実莉……」








お母さんのことが大好きだった実莉にとって、かなり信じがたいものだろう。





私だって信じたくない。





けど、







私はお母さんに、ナイフを向けられたから。







柚希のお父さんと再婚することを、私は直に聞いたから。







信じたくなくても、脳内にあの光景が思い浮かぶ。





唇をぎゅっと噛み締めて、下を向いた。








すると、福井くんがそっと私の手のひらを握った。






福井くんは私に寄り、お母さんをじっと見つめる。





すると、福井くんの背後から、数人の施設の人が現れた。





「福井様、見られたくないでしょうから…お部屋にお戻り下さい」







「……わかった。二人とも、ついてきて」






手を引かれ、固まっている実莉を連れていこうと手を引くと…








「この裏切り者!!あんたを育ててやったのは一体誰よ!!自分の母親がひどい目にあっているというのに、助けようと一歩も踏み出さないなんて最低ね!!実莉、あんたもその裏切り者とせいぜい仲良くしな!!」







「お母さんっ!!」







実莉がお母さんにそう叫び、涙を散らしてギロッと睨み付けた。






「私、優しいお母さんが大好きだった。でも、それは全部偽りだったんだね。真莉ちゃんは裏切り者なんかじゃない!真莉ちゃんをそんな風に言わないで!」






「……ごめんなさいっ…」




自分の目から涙が零れ落ちたのを理解し、傷ついた私の心にこれ以上傷をつけないよう、私はその場から逃げ出した。








続く