「陽菜ちゃん、ごめんね。直希、ちょっと言い過ぎたみたいで反省してるから。」

直希の母親が追いかけてきて、陽菜に言う。

「全然気にしてませんから。ノート、ありがとうって言っといて下さい。帰って勉強しなきゃ。じゃ、さよなら。」

やっぱり元気のない陽菜に

「またきてね。」

そう声をかけた。

いつもの喧嘩と違う気がしてそう声をかけた。

そう声をかけなければいけない気がしたから。


玄関を出て門を出ると、道を挟んですぐ向かいが陽菜の家。

陽菜は自分の家の門を入って振り返り、直希の家を見る。

「相変わらず腹立つくらいでかい家。」

苛立ちを家の大きさにまでぶつける陽菜。


「陽菜ちゃん!」

玄関前で立ち尽くす陽菜に、庭の方から声がする。

「舜?」


「陽菜ちゃん暇ならサッカーしようよ。」

庭で一人ボールを蹴る弟の舜がいた。

返事もせず、右手にコピー用紙の束を握った陽菜が立ち尽くしていると、舜は陽菜めがけてボールを蹴った。



ドカッ!!