「あ、明日、サッカーの試合だっけ?」

竜之介が話し始める。

「あぁ、練習試合だよ。」

直希が答える。


「また陽菜ちゃん、応援に行くんでしょ?」

竜之介が言う。

「さぁな。こなくていいんだよ、つか、こないでほしいよ。ありゃ、応援じゃなくてヤジだからなぁ。恥ずかしい。」

直希が言う。

「勝利のヤジ女…」

「?」

「って呼ばれてるんでしょ?陽菜ちゃん。サッカー部員の間じゃ“勝利の女神”ならぬ、“勝利のヤジ女”!陽菜ちゃんがくれば、負けない!ってね。」

「たまたまね、た・ま・た・ま!」

「どうだか…」

「なんだよ。」

「別に?」

「陽菜が来ないと勝てないみたいに言うなよ!陽菜のおかげで勝ってるみたいに!あいつが来ない方がなぁ、楽に勝てんだよ!楽に…」

「あ、そ!」

「そうだよ!」

竜之介は不機嫌になった直希を横目に見ながら、“どうだかね”と心の中で呟いた。