「いってぇなぁ!暴力女!!」

足をおさえて顔を歪める直希。

陽菜が風邪で学校を休んでいた間の授業のノートを巡っての喧嘩。

いつもの事ながら直希の母親が間に入る。

「もう!直希!さっさと貸してあげなさいよ、ノート。約束したんでしょう!」

直希の母親はいつも陽菜の味方。

「はいはい!はいはいはいはい!!」

直希は上着と鞄を雑に掴むと、自分の部屋に向かう。

「もう風邪はいいの?」

「うん、もうすっかり!」

直希のいなくなったソファーに座り仲良く会話。

「ただいま。」

「あら?珍しい!」

「おかえり、和希君!」

「おう、陽菜。いらっしゃい。」

直希の兄、和希の帰宅。一人暮らしをしている大学生の和希が久々に帰って来たのだ。

「蒼輔も帰って来てるよ。」

「お兄ちゃんと一緒だったの?」

「偶然そこで。」

蒼輔は陽菜の兄。
和希と同い年の幼なじみ。
一人暮らしはしていないが幼稚園から大学まで、ずっと一緒。

直希と陽菜も高校2年の今の今までお向かいさんの幼なじみの腐れ縁。