「ただいまぁ…」


「おかえり…?元気ないわね。」

陽菜の母親が出迎え言う。

「…別にぃ?いつもと一緒だよ?」

2階の自分の部屋に向かう階段の途中で陽菜が言う。

「失恋でもしたみたいに気のない“ただいま”だったわよ?」

母親の言葉に陽菜の足が止まる。

勢いよく階段を駆け下り母親に詰め寄る。


「私、失恋したの!?」


陽菜が真剣にたずねる。




「………いや、知らないけど!?」

母親の困った返事。


陽菜は持っていたコピー用紙の束を丸め始めたが、途中我に返り広げ始める。

「大丈夫かしら!?」

母親は呟く。

「大丈夫ですからっ!!」

陽菜は再び自分の部屋に向かう。

「…………」

母親は陽菜のいなくなった階段の上の方をしばらく見つめていた。