【全巻完結】愛は惜しみなく与う①


彼女の家まで学校からだと歩いて15分くらい。まっすぐ家に帰るのだろうか


朝は泉さんと車で来たようだ


家の方向とは違い街の方へ歩いていく


何もないといいけど…


道の途中で杏さんは急に方向を変えて住宅街へ走っていった。
やばい、尾行気づかれたか?同じ方向に走ってついていくと


杏ちゃんは、おばあちゃんと手を繋いで歩いていた


ん?どういう状況?


「ばあちゃん!こんな重たいもの持つなら、タクシー乗らな!腰もっと曲がってまうで!」


そう言いおばあちゃんの荷物を持って歩いているようだった

優しい… 腰曲がるで!とおばあちゃんの腰を軽く叩いていたが…おばあちゃんは笑顔だった


なーんだ。それで急に走ったんだね


家に送り届けたのか荷物を持たない杏さんは、またトコトコと歩き出す


また少し距離を保ちついていく

泉さんは急用と言って帰ったと言ったが、急いでいる様子は…ないな


鼻歌でも歌ってるのか?ってほどルンルンと歩いているように見える


楽しそうで何よりです…
杏さんは携帯を取り出しキョロキョロしながら電話をし出した


内容は聞こえないが、なにやら話している


だーかーら!!!


そこだけ声が大きくて聞こえた


特攻服、しつこい!、うるさいなー!


その単語も聞こえた
どうやら電話の相手は親しい人なのかな?笑いながら暴言を吐きつつ楽しそうに話していた


杏さんの地元の友達かな?
なんて思っていると電話が終わり再び歩き出した


すると街への方向ではなく、家に帰る道に方向転換した

え?電話のためにうろうろしてたのか?


彼女はまたも、ルンルンして歩いている


行動がよく分からない…

そして近所のスーパーへ行きなにやら買い物をしている。泉さんたちも、杏さんの家にいると言っていたから…ご飯かな?

家庭的な面が見えて、杏さんのイメージが変わりつつも、しっかりとマンションまで尾行する


その途中、派手な男3人組が杏さんの前からくる


見たところ、見覚えがないからどこかのチームに入っている奴らでは無さそうだが…


明らかに杏さんを見ている

……ただのナンパか?

そう思ったら、男の1人が杏さんにぶつかり転んだ

やばいやつか


男はいたたた!折れた!!と言い腕を押さえる


慰謝料とか、腕治るまで付き合えとか言う奴だな?


やばい


これは…




男たちが危ない!


杏さんは、フル無視して歩く。それに怒った男が杏さんの肩を掴む

そして振り返った杏さんは笑顔で言った



「折れてたらそんなんで済まへんねんで?ドアホ」


離れていても殺気が伝わる

だから言ったんだ。男たちが危ないって
案の定、ひぇぇ!と言いながら走り去った

少し気の毒だ


杏さんはぶつかられた肩をパンパンとはらってまた歩き出した


このまま早く家に帰ってくれ。そう思った


巻き込まれそうだったから


そんな悪い予感は当たり、見知った顔の男が4人来た。黒蛇の奴だ

泉さんに連絡するか…さすがに4人は…2人で行けばいけるか。俺も杏さんの所へ行こうとした



でも遅かった



「あんたら懲りひんな」



杏さんの言葉ともに男たちは、うっと苦しそうな声を出した


速すぎ

手加減したのか男たちは倒れていないが、覚えてろよ!とよく聞くセリフを吐いて逃げていった


「覚えとくー」


そうゆるく返事をした杏さんは、何事もなかったかのように、マンションへたどり着いた




……疲れた


泉さんに電話電話


あったことを報告すると、おばあちゃんの所で、電話越しにでも笑ってるのを感じた。

そのあと肩をぶつかってきた男たちと、黒蛇の話をしたら、少し怒っていたが無事ならいい。そう言って俺に御礼を言い電話を切った


泉さんは、無表情だ

基本

怒ってる時はすごく分かりやすい。
なんか黒色のモヤモヤしたオーラが身体から出ているから

ただ笑うことは少ない

レアだった


けど最近よく笑う。杏さんの感情豊かなあの感じが、泉さんに移ったのかもそれない



それでも2人は付き合ってないと言う



不思議だ
俺は杏さんみたいな強くて頼もしい女の子とは付き合えない


少しするとLINEが届く


画面を見ると杏さんだ



『 尾行へたすぎワロタ(´^д^`) 』



ほらね。なんでもお見通しだもん


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数週間なんてあっという間!

北蓮見の学園祭の日がやってきた!!!
特に準備することもなく、練習することもなく…

こんなんでええんかいな


ただあたしは!!!!


泉がゆうてた、自由演技だけは、完璧にした。
みんなにはまだ何するか言うてないけど


きっと盛り上がると思う


学園祭には、他校のヤンキー君達や、烈火目当ての他校の人女の子達も、たくさん来るらしい


毎日正面玄関で待ち伏せされてる烈火のメンバーは、裏口の生徒が入れない玄関から学校に入っている

どっかのアイドルかいな…


朝から空砲とかなっちゃって、祭り感がでている北蓮見は、どこの誰が飾り付けしたのか知らないが、校庭がお祭り仕様に変わっていた


ゴミひとつない綺麗な校舎に校庭!!!!



やれば綺麗になるんやな。そう思った


「杏!本当に自由演技勝てるのか?」

「朔さん心配しなさんな〜!完璧やさかい楽しみにしとき!」


ふふふーん!楽しみ楽しみ
きっとみんな、アッと驚いてくれる


やしその前の競技達は


全部烈火が、勝利を掻っ攫う!!!!!

今日は動きやすいように、みんなバイクだ。
あたしは泉の後ろに乗せてもらう

あたしもこっちでバイク買おうかな?でもあたし、別に暴走族な訳でもないしな?
ふつうにバイクは好きやけど


そして北蓮見に近づくにつれて、驚きで開いた口が一生塞がらなかった



「なんでこんな人おるん?」



今まで見たことないくらい、北蓮見の正門に人が集まり、学校の中にも人だらけ


7割女の子 3割ヤンキー


みたいな配分



女の子多すぎやろ!やば!

きゃーきゃーと普段北蓮見からは聞こえない甲高い声が聞こえる



「みてーーー!烈火よーーー!」


ぎやぁぁああああ

もはや雄叫びやん

バレた!そう朔は言って裏回るぞ!と言いバイクを転回させる

そらあんな正門から通ってられへん。揉みくちゃにされて、あたし殺される!!


女の子の集団を引き剥がし、裏門にバイクを止める。ここは先生しか通れないから安心


「北蓮見の学園祭、こんな人気なんやな」


聞いてたけど、聞いてた10倍はえらいことになってた


「あー…今年は杏がいるのか。お前後ろから刺されないようにしろよ」


突然朔が言い、体が固まる


「もう!なんでそんな脅かす言い方するんだよ!杏、大丈夫だかんな?」


響が慰めてくれる。うぅ。いい子
それにしても、刺される可能性あるのは困るな
常に気を張ってなきゃいけないじゃん


「そうですね…過去3年のデータを見ると、北蓮見の女子生徒が原因不明の怪我をしていますね。きっと野次馬のうるさいバカ女のせいでしょうけど…杏も気をつけてください」


新は後ろを振り返りあたしに教えてくれる。でも、聞きたくなかった

何されるんや、あたし


新のバカ女ってゆうパワーワードは流しておこう



「大丈夫だ。そんなことはさせない。したら殺す」


…泉さん?顔怖いで?

まぁ、あたし女の子に負ける気は1ミリもないし大丈夫やと思うけど、変なことに巻き込まれへんかったらええな


学園祭のこの日だけ、全校生徒は学校指定の体操服を着る


なんでこんな時に一致団結しとんねん



「お前ら、絶対勝つぞ」



我らの総長の掛け声で、北蓮見が揺れた
グラウンドには、続々と人が集まってる。ただ中に入ってこれへんように柵みたいなんが出来てる。

これで部外者は乱入できひんってことやな


まぁ飛び越えれば柵の意味もないけど、ないよりマシ。


「杏ちゃん?ところで自由演技は何するの?」


ふふふふふよくぞ聞いてくれた


「知りたい?」

「「「知りたい!!!」」」



ふふふふふ
あたしの素晴らしき案!!!



「あたしと泉で前みたいに手合わせするねん!」



シーーーーーーン



え?




「喧嘩ってゆう競技があるのに、まだ喧嘩するの?」

慧の目は、こいつ何言ってんだと言いたげな目をしている



「ノンノンノン!」


チッチッチ!違うんだなー!



「おい、俺は聞いてないぞ」

「ゆうてへんもん!」


盛大な泉のため息を頂いたが、これは決定事項だ。絶対盛り上がるから任せてほしい


「ちなみに、慧、朔、響、新にもでてもらうしな!心しといてや!」


えーーというブーイングは無視する。
だって初の学園祭やで?思い出に残ることしたいやん


聞くところによると、自由演技の評価の時は、烈火ファンの女の子の評価も入る。

4年前、勝てるだろとふんだ烈火メンバーは、自由演技のときただただその場に立ってたんだってさ

ほなら、優勝したらしい


意味わからんやろ?他のチームは頑張って考えて色々やったのに。


せやし、次の年から、女の子の票は無効になったらしい。

北蓮見らしい理由やけど、男からの評価を得なあかん。そうなってからの、自由演技の烈火は弱かったらしい

まぁ敵対してるチームばっかりやし、しゃーないんかもしれんけど、今年はそうならへん


絶対に盛り上がる!!!



「衣装あるし、自由演技の前に着てな」


「は?衣装?どーゆうことだよ!」


「つくったんやん!あんたらの衣装!」



もしかして!!!あの時の!!5人は声を揃えて言った。そうそう
この衣装をつくるために、あたしの家で採寸会をした

でも服作るゆうたら、協力しなさそうやし、無理矢理服を引き剥がして測った



素直に測らせへんから大変やった