家を出て、目指すのは学校。
今日から通う、製菓専門学校。
門の前で、背のすらっと高い女の子が手を振ってる。

「音ちゃん!!こっち!」
「優乃!」

あの子は唯一同じ高校から同じ専門学校に進学した友達だ。

彼女は和菓子コースだから学科は違うけどね。

「音ちゃん、こちらママとパパ」

「あなたが音ちゃん?!」

いきなり名前を呼ばれたかと思えば、手をガシッと掴まれる。

痛いくらいに。

「うちの娘ね、本当に今まで自分で何もしてこなかったのよ。だから、これからお願いね、一人暮らしなんて本当心配…面倒見てやって!」

「は、はい!」

ちょっと、と恥ずかしそうに怒る優乃を横目に、少し笑みがこぼれた。

怒りながらもお父さんとお母さんに囲まれる優乃は幸せそう。

こんなこと、うちの家ではあり得ない。

入学式に来た親の多さに驚きながら、1人家から歩いてきたことを思い出して虚しくなった。